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「賞に選ばれなくても、ダメなビジネスじゃない」銀行員の壁打ちで学んだ“伝わる力”と、自分サイズで育てる「ソロプレナー」の戦い方

CC-Hub合同会社代表 野村 耀平 (コッコデショ!3期生)

長崎の起業熱に驚き、「コッコデショ!」の門を叩いた野村氏。プログラム中は銀行員目線のシビアな壁打ちを通じて「テクノロジーを素人に伝える力」を磨き上げた。コンテストの順位にはこだわらず、着実にスモールビジネスを成長させてきた彼が、次に仕掛けるのは「学生のキャリア教育」と「産官学連携のスタートアップ」。自分のペースで事業を形にする、等身大の起業ストーリー。

Q:3期生としてコッコデショ!に参加してみてどうでしたか?参加された経緯を教えてください。

A:経緯はですね、2つありまして、まず1つ目が、2期生に知り合いが参加してたんですよ。ちょうどその2期生の方から、「こういうコッコデショ!っていうプログラムがあるよ」「向いてそうだよね!参加してみたら?」って誘っていただいたんです。

2つ目が、元々フリーランスでやってて、そこから法人を立ち上げようかなって思ってたタイミングでもあったんで。誘われたのと、法人設立をしようと思っていたタイミングが一緒だったんです。

Q:実際に参加してみられて、受けた率直な印象はどんなものでしたか?

A:一番びっくりしたのは、長崎で「起業ブーム」みたいなのが巻き起こってるんだ!と感じたことが一番衝撃的で。加えて女性の参加者がめちゃくちゃ多かったことにびっくりしました!感覚が都会に近くなってきた、みたいな。

Q:確かに、それはあるかもしれない。

A:元々、どちらかというと長崎に対して結構後ろ向きな感情の方が多かったので。なんかこう…自分としても、すごい「あ、長崎いいな」と思える瞬間だったというか。

Q:3期生としてコッコデショ!に参加して、事業を進捗させることができた!というような、実際に行ったことなどはありますか?

A:その「コッコデショ!」の中で考えていたのが、「ラントゥーアン」と言って、勉強がお金に変わるっていうようなサービスをちょっと考えてたんです。

Q:勉強がお金に変わるサービスですか!

A:ハイ、勉強の過程自体にもお金が発生するっていう。

Q:夢に向かって勉強は「努力」としてやりますけど、やっぱりそこに対して向かっていくってしんどいじゃないですか。

A:収入がない状態でずっと夢に向かっていき続けるっていうのもしんどいなと感じることが多いから、その過程自体がお金に変わるっていうものをサービス化したいなと思ってたんですよ。
そのプロトタイプを作るにあたって、例えばすごく参考になったメンターからのアドバイスとか、気づきになったアドバイスはありますか?僕はどちらかというと「テクノロジーの説明」ばっかり最初すごいやってたんですけど、何も知らない人にも伝える「伝え方」をすごくここで学ぶことができて、 実際にサービスのプロトタイプを作るところまで、実際にコッコデショ!の中では行くことができました。

Q:そのプロトタイプを作るにあたって、例えばすごく参考になったメンターからのアドバイスとか、気づきになったアドバイスはありますか?

A:1番は、十八親和銀行のコッコデショ!担当の方(※当時は川口さん)に、壁打ち相談や面談をたくさんしていただいたんですよ。その中で、僕が「なんでこれが伝わらないんだろう」みたいなところを、すごく「こういうふうに伝えたらいいんじゃないか」と言ったような”伝え方”のアドバイスをしていただきました。
それこそ銀行って、お金を融資する側なんで、より事業計画などについての「伝わる書き方」をサポートされてる。“銀行員としての目線”をすごいくださって、最終プレゼンとかは、すごい伝わる内容に変えられたのかな、って思いますね。
銀行として融資をするんだったら、こういう要素が揃ってたら「お金を貸せるのにな」っていう目線でのアドバイスが、ピッチでも同じような使い方をすれば“伝わりやすく”なる。
そこの具体的なアドバイスをいただけたのは本当に嬉しかったです。

Q:すごく参考になった講義や講師の人のアドバイスなど、記憶に残っているものはありますか?

A:3期生は、どちらかというと講義よりは、もう“毎回プレゼンをやる”みたいな感じだったので、すごい“場慣れ”をしたというか。毎回毎回の講義でピッチの時間があるから、それでもう数をこなすことができたのが一番大きいですね。

Q:コッコデショ!の中で受けてみたいサポートや「こういう部分を利用してみたい」など、“今後こういうふうに活用していきたいな”といったものはありますか。

A:そうですね。弊社CC-Hubでは最近大学生のアルバイトさんが結構増えてきたんですよ。
そこの“労務管理”について、社労士さんのアドバイスだったりとか、会社を“立ち上げた後”、拡大をしていく時のバックオフィス系のサポートが、すごい今欲しいなって思ってます。(その後、コッコデショ!のサポートメニューを活用し、社労士とマッチング)

Q:卒業生の観点から、「コッコデショ!」ってこういうふうになっていったら、もっと長崎の“起業文化”がもっともっと育っていくのにな、であったり、もっとこういうのだったら良さそうだよね、みたいな発展していくためのアイディアや意見がありましたら聞かせてください。

A:そうですね。2つあるかなと思っていて
1つは、やっぱり「スモールビジネスの起業」っていうところを、もっと押し出してもいいんじゃないかな。
やっぱり“スタートアップ”っていうふうになってくると、資金調達をして、最速で成長して、最速でリターンを…買収する、みたいな大きなスケールを描くというのがすごい強いと思うんですけど、どちらかというと今の時代は、そういうものより、やっぱスモールビジネスを着実にステップアップしていくっていうことの方が、今のトレンドとしては合ってるっていう気がしてるんですよね。
スモールビジネスを【着実に成長】させるやり方の方が、なんか、こう、今の時代に合っているかなっていうのが1点。
で、もう1点が、“ソロプレナー”という言葉が最近出てきてて。1人起業家のことですよね。僕の会社は元々ソロプレナーで、僕1人でやってたんですけど、今はアルバイトの学生たちも入ってきました。

1人で起業するソロプレナーの方を育てるっていうところの観点も増えると、長崎の起業文化っていうのは、もっと促進されるんじゃないかな。
僕はやっぱテック系なんで、よくシリコンバレーとかよく見るんですけど、シリコンバレーもそういう傾向になってきてるんですよね。
株式で出資を受けて、最速で成長して、Googleみたいな会社を作る、みたいな…一時期のFacebook感覚ではなく、もう“ソロプレーナー”で1人で、っていう。

やっぱそういうふうな積み上げ方っていうのを、まだ日本はあんまり取り入れられてないところがあるんで、長崎でやったらいいんじゃないかなって思います。

Q:今後のCC-Hub合同会社の展望をお聞かせください。

A:事業展開としては3つ考えてるんですよ。
一つは、社名の由来にもなっている“キャリア教育”についてです。僕は長崎って、キャリア教育が一番課題じゃないかなって思ってるんですよね。
東京の20代と長崎の20代が見てる“職業の数”とか、全然違いますよね。業界の幅も全然違うじゃないですか。だから、その学生たちが思い描ける職業の幅とか選択肢が、めっちゃ少ないと思ってるんですよ。
で、それは学生たちだけじゃなくて、保護者世代も一緒だと思うんですよ。長崎にない職業は知らないから、「子どもがなんか変なこと言い出した」みたいな。
僕なんか、まさにそれを食らったんですよね。学生の時に。で、やっぱそれが、今長崎に戻ってきて、同じ閉塞感みたいなのを、長崎の若者が感じてるっていうのを目の当たりにしたんですよね。
その上で、今いろいろ経験した僕なら何か出来るんじゃないかなと思って。

まず1つが、学生たちに対して、今、授業をやらせてもらってるんです。

Q:そうですね。教鞭に立たれてますよね。

A:そうなんですよ。今、AIとかが出てきてる中で、どういうふうに…「AIが仕事を奪う」とかって言われてますけど、キャリアってどういうふうになるんだろうとか、社会ってどういうふうになるんだろう、みたいなところを伝えさせてもらってるんですよね。
で、そういう学生たちの職業観とか将来に対する考え方が、変わればいいなと思ってる。そういうふうな授業の機会を頂けているところが1つ目。

2つ目が、そういう学生さんの中で興味がある方がいたら、アルバイトで弊社で経験を積んでもらうことができる。
今提携している会社で、岡山の会社さんがあって。そこが、いわゆる“ノーコードで開発をする”っていうところに特化している会社さんなんですよ。
で、弊社がその会社と提携して、案件を取ってきていただき、弊社で開発を受託する、っていうのをやってるんですが、その開発をまさに学生にやってもらってるんですよ。
情報の学部の学生とかは、理論はめっちゃ入ってるんですけど、それがちゃんと“実務に変換される”っていう実感が全然ないんですよね。活かせる場所が長崎、ないんですよ。

だから、そういう意味でも、大学で学んだ理論はこんなふうにちゃんと社会で役立てられるよ、っていうところを、うちの会社でちゃんとバイトとして、開発をやる、っていうところで、作りたいなと思っています。

3つ目が、長崎でそういった新しいテクノロジーを詰め込んだプロダクトとかサービスを、本当に“スタートアップとして”ぽんと出すということです。

そこに今、大学と学生といろいろ研究させてもらってる部分もあるんで、論文とかを一緒に書きながら、ビジネスも成長させていくという、その“産官学連携”で。スタートアップを本当に排出するのが、長崎には必要だなと感じています。スタートアップをやるんだったら、産官学連携で地域で作っていこう、みたいな。必要かなと。
そういったものが文化として根付いていくといいなというのは思いますね。

Q:最近では、東京で開催された大規模な特別講座にも登壇されたと伺いました。

A:はい。2026年1月に東京で開催された「発電プラントへのAI・DX技術の活用」という特別講座に登壇しました。東京大学の教授や関西電力、日立パワーソリューションズといった日本を代表する企業や研究者の方々と並び、長崎のスタートアップとしてお話しさせていただきました。

Q:錚々たる顔ぶれですね!具体的にはどのようなお話をされたのですか?

A:「生成AIによる知識・技術伝承」についてです。現在、火力発電プラントの現場では、化学分野などの専門知識を持つベテラン人材の高齢化と退職が進み、「技術の継承」が深刻な課題になっています。ノウハウが属人化し、文書化されていない暗黙知が多いんです。
そこで、ベテランの判断ロジックの言語化や社内文書の横断検索(RAG)など、生成AIを使って単なる人の代替ではない「技術の継承装置」を作る構想についてお伝えしました。

Q:エネルギー基盤という、まさに国力に直結する分野への挑戦ですね。

A:ええ。今、AIやデータセンターが注目されていますが、電力が止まればITもAIも一瞬で止まります。発電プラントの安定稼働なくして日本の未来は描けません。 そして、この国家レベルの課題に「なぜ長崎から挑むのか」ということにも大きな意味があります。長崎は人口減少や人材不足が先行する「課題先進県」です。地方の現実を誰よりも肌で感じているからこそ、地方の若者が最先端の生成AIを武器に、エネルギー産業という基幹分野に挑戦する「ロールモデル」を作りたいんです。 テクノロジーで社会課題を解決することが、長崎の若者にとって「遠い話」ではなく「自分ごと」になるように。これからも長崎から挑戦を続けていきます。

Q:では最後に、現在のコッコデショ!の受講生、もしくは卒業生や、アクセラレーションに携わっている方々に向けて、何かメッセージがあればお願いします。

A:まず、“長崎を面白くしてくれて、ありがとうございます”とお伝えしたいです。

僕自身が今長崎にいて、スタートアップの文化や自分がずっと携わってきたことが、長崎でもできるっていうのが、すごい楽しいなと思ってますし、今後も、ぜひこの文化を継承していってもらえたらなと思っています。参加者の皆さんに向けては、プログラム上、最終的には“スタートアップピッチ”とか、コンテストで順位決まったりとかしますけど、ぶっちゃけ関係ないかなと。例えば賞を受賞しなかったから“ダメなビジネス”ってわけでは絶対ないですし。僕なんかも、全然“最終ピッチ”に出てないんですよ。出てないんですけど、着実に今“スモールビジネス”もやりつつ、“スタートアップ的な動き”もできつつ、っていうのが出来ているので。
本当に“自分がやりたいことって何なのか”とか、やっぱ自分とすごく向き合うことが必要かなと思いますね。だから、本当に“自分のやってること・やりたいこと”を信じて、一緒に頑張って行けたらなと思います。

インタビュアー:合同会社夢限-MUGEN 代表 林 孝行

自身もコッコデショ!に1期から参画。5期では「事業拡大支援グループ」に属し、会社の事業推進のサポートを受けている。活動歴18年のシンガーソングライターとビジネスコーチを両立する”唄うコーチ”として活動しているほか、Webメディア「ナガサキ女子」を運営。

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