長崎市長 田上 富久氏
長崎南高校、九州大学出身です。大学生の時、自分は何をしたいのか悩んで、1年休学して中洲のクラブでウエイターをしたり色々なアルバイトをしたんですが、その時期に市役所で仕事してみたいと思うようになりました。県庁でも町役場でもなく長崎くらいの大きさ・個性のある街の市役所がいいなと思い、それで長崎市役所で働くことになりました。
最初に配属されたのは広報でした。広報の仕事は広く浅く色々な人と関わる仕事なのですが、そこで出会った街づくりをしている人たちがとても魅力的で。長崎の歴史の重層的な面白さにワクワクし、知れば知るほど知らないことが増えてきて長崎の街にどんどん惹かれていきました。この体験が長崎の街づくりの役に立ちたいと思うきっかけになり今に至っていると思います。
とにかく「個性がある街」だと思います。長崎市には「この街にしかない」「この街だから」がたくさんあります。
個性は時代によっては長所にも短所にもなりえると思うんですよね。長崎市は「日本の西の端」という位置的な個性を持っています。この個性は今まで「東京からは遠い」とマイナスに捉えられてきましたが、「アジアから近い」というプラスの面もあると言えます。
個性をプラスに活かすことで、長崎の街はものすごく面白い街になると思っているんです。
元々長崎はアジアに飛び出したい人たちが集まった街でした。長崎は、異国文化に触れるチャンスに溢れていましたが、鎖国が始まると自ら外に飛び出すことはできなくなり、ただ貿易船が来るのを待つしかありませんでした。船が来た時に交流を爆発させていたのです。
このような歴史背景が「おもてなし」「受け入れる文化」に繋がっていると思います。長崎の人ってお客さんが来ると嬉しくなってもてなしたくなるんですよ。地図を開いている人に話しかけたくなるし案内したくなる。そういう気持ちが自然に育ってきたんだと思うんです。
450年前の開港からずっと長崎は異なるものの”出会いの場”でした。外からの刺激を受け入れて自分たちのものにするうちに、保守的なのに新しいものが生まれる街になったのだと感じています。
産業政策は地場企業の振興、企業誘致、創業支援の3本柱を行ってきました。代表的なものは、県や大学とともに作った起業家育成施設「D-FLAG」と、長崎市の創業支援窓口である「創業サポート長崎」です。
これらの制度的なものを整えたところに、ふくおかフィナンシャルグループ(以下、FFG)とのコラボレーションが始まり、仕組みや実際に起業する方々の発掘などの新しい支援に力を入れることができるようになりました。
まず、長崎には様々な分野に特化し、力を持っている大学が複数存在しています。これはものすごい強みです。そしてこの強みを活かすために、県・市・大学・さらにはFFGの連携がしっかりとれており、オープンイノベーションやスタートアップを「チーム」でサポートする体制が出来上がっています。
長崎は県と市の連携がしっかりしているんですよ。例えば企業誘致はワンストップ窓口があり、手間も時間も省けるようになっています。スピード感を持って対応できていると思いますね。
FFGベンチャービジネスパートナーズの福田社長と
高齢化や斜面地など長崎がかかえている地域課題は、これまでマイナスと捉えられていました。
でも今は、それを新しい手法で解決することで新しい価値を生むことができるという意味で資源という捉え方が生まれてきています。
大学・県・市・FFGというチームで「新しい価値」を作ることが、地域課題の解決にもビジネスチャンスにもつながっていく時代になってきたと感じています。
今、世の中が「新しい価値を求める時代」です。日本が安定していた時代では1人で何かにチャレンジしてもどうしようもないことがほとんどでしたが、今は1人でも新しい価値が生み出せてそれを応援してくれる人たちもいる。誰もが新しい価値を世の中に提供できるようになってきているんです。
長崎から新しい価値が生まれ世の中に広がって、社会の役に立てるようになるって素晴らしいことですよね。長崎には色々な人が長崎を舞台として活躍してきた歴史もあります。長崎という街の活かし方の新しいスタイルがスタートアップだと思うとワクワクしますね!
Startup Compassやコッコデショ!というスタートアップ支援によって、1人1人が自分の未来を切り開いてチャレンジをし始めました。その中で新しい価値が生まれます。スタートアップする人たちがここで育っていく、その土壌になることが私たち長崎が目指している街のあり方なんです。
どんなやり方でどんな風にするともっといい土壌になるのか、今長崎市が行っている起業支援の取り組みは市にとってもチャレンジなんです。1歩ずつ進みながら道を見つけていく、そのチャレンジが今始まったと思っています。そういう意味では長崎市も1つのスタートアップなのかもしれないですね。
長崎市役所の強みは真面目で優しいところだと思っていますが、今回のチャレンジに関しては自分から課題に飛び込んでいく、一歩踏み出す気持ちが大事になってきます。先が見えない中で若手の職員がチャレンジ精神を持って頑張ってくれているのがすごく嬉しいんですよ。若手が経験で得たものが市役所本体にも返ってきてより良くなる、その契機にできたらいいなと思っています。スタートアップ精神を持った職員がたくさんいるような市でありたいですね。
コッコデショ! キックオフの様子
スタートアップ支援「コッコデショ!」のスタートの時、KabuK Styleの砂田さんが「とにかく本気でやる人たちを応援したい」とおっしゃっていました。やりきる熱量がないとスタートアップは生優しくないからだそうです。
スタートアップを目指している皆さんにはぜひやり切ってほしいと思いますし、我々長崎市も1つのスタートアップとしてやりきる覚悟でいきます。
一緒に未来を切り開いていきましょう!